ベアリング豆知識 -総ボール(フルボール)タイプのベアリング- 

総ボール(フルボール)のベアリングと聞いても、形がイメージしにくく、分かりにくいですよね。
今回は、そんな総ボール(フルボール)タイプのベアリングについて、画像を入れながらご紹介をしたいと思います。

総ボール(フルボール)のベアリングとは、「保持器」のないベアリングの事です。
(保持器は、転動体(ボール)を一定間隔で保持している部品です。詳しくは、「ベアリング豆知識 -構造編- 樹脂ベアリングを分解しました!」をご参照ください。)

今回は、6000番のベアリングの現物を実際に見て頂く事で比較をしたいと思います。
左が保持器ありのベアリングです
右が保持器なしのベアリング(総ボール(フルボール)タイプ)です。
「保持器あり・なし」をご確認いただけるでしょうか。

ベアリングの色が異なりますが、これは材質の違いです。
今回は、材質の違いも見て頂きたいと考えて、材質違いのベアリングをご用意させて頂きました。
左は、内外輪とボールが「ジルコニア」で保持器が「PEEK」のベアリングです。
右は、内外輪とボールが「Sic(炭化ケイ素)」で保持器が「ない」ベアリングです。
セラミックの種類によって白かったり、黒かったりと色目が異なります。

同じ6000番台ですが、左の保持器ありと右の保持器なしでボール数にも違いがあります。
保持器なしの総ボール(フルボール)タイプは、ボール数を多くすることで、回転時のボール脱落を防止し、強度を上げています。

保持器がない状態が確認しにくいかと思い、総ボール(フルボール)タイプについて立てた状態で撮影をしてみました。
こちらでは保持器がないことがはっきりとご確認いただけるかと思います。

ボールが偏っているなと思われるかもしれませんが、回転をすると遠心力でボールは均等に配置されるようになります。
実は、保持器がない分、総ボール(フルボール)タイプのベアリングは許容回転数が低く、耐荷重も低いです。
ではなぜCHIYOBEAで、総ボール(フルボール)タイプのベアリングのラインアップをご用意しているかというと「耐熱性」を上げる為です。

保持器は、「PTFE」や「PEEK」といった樹脂を使用しています。
樹脂を使用しているために、どうしても耐熱温度が低くなってしまいます。
保持器がPTFEの場合の耐熱温度は「180℃」で、PEEKの場合の耐熱温度は「260℃」です。
ところが保持器がない総ボール(フルボール)タイプの場合、耐熱温度がぐっと上がります。
保持器がない総ボール(フルボール)タイプのジルコニア製のベアリングの耐熱温度は、「400℃」になり、窒化ケイ素製の耐熱温度は「800℃」、炭化ケイ素製の耐熱温度は「1100℃」まで上がります。
画像の黒いベアリング(炭化ケイ素製の総ボール(フルボール)タイプのベアリングは、耐熱温度が「1100℃」もあるのです!)

CHIYOBEAでは、高い耐熱性が要求される場合に、保持器なしの総ボール(フルボール)タイプを選択しています(もちろん許容回転数と耐荷重の範囲内のご使用環境の場合のみです)。
もし、保持器ありの耐熱温度でも十分なご使用環境の場合は、許容回転数も耐荷重も高い保持器ありを断然にお薦めします。

今回は、総ボール(フルボール)タイプのベアリングを実際に見て頂きました。
実物を見て頂く事でイメージがしやすかったのではないかと思います。
また皆様にとって有意義な情報をお届けしたいと思いますので、引き続き、よろしくお願いします。